2010/01/16
たわごと:きさまぁ!
“きさま” って言葉がありますよね
「きさまだけは絶対ゆるさん!!」とかのキサマです。
子供のころから不思議に思ってました。きっと私だけじゃないと思います。
きさま…漢字で書くと“貴様”
貴様
とうといさま
これ,人称に使われたら、先入観なくして普通に字の意味を読むと、
貴いかたの意味にとれますよね。
貴方とか貴殿とか貴社とかもあることだし、ここは一つ“あなた”の一つ上ぐらいの意味で
“貴方様”、“あなたさま”。
でさらに“き”の音の意味をとって「とうといあなたさま」だと思ってみることにします。
「貴いあなた様だけは絶対ゆるさん!!」
うーんなんか変だ。
逆にこういう使い方の方が合いそうです、
「貴様にはお世話になってます。つまらない物ですがどうかお納めください」
とか
「いとしい愛しい貴様…」
……本当に言ったらややこしい事になりそうですが…。(〃^∇^)
で、大人になって知ったのは、やっぱり元々尊称であって、
それが親しい間柄の人称に変化したそうです。
同期の桜って軍歌の「貴様と俺とは…」って使い方ですね。
そしてさらに侮蔑語として使われて、すっかり元の意味が逆転してしまった言葉だそうです。
もしかすると暴力が売りの映画で使いやすかったから広まったのかもしれません。
声に出してやってみると分かりやすい話なんですが。
「おまえ」だと大声で叫びにくい。”御前”なんで深みは出せるけれど。
「てめぇ」だと大声でも言いやすい。けれど基本が“手前”つまり自分。自分をYOUの意味で使う関西弁なんです。違和感が出る事がある。むかしなら教養あるしゅっとした東京人の若者が「てめぇ!」はないだろってこともあったんでしょう。
「べらんめぇ」も叫べる。“便乱坊め”という江戸の芸人を引き合いに出した罵倒語。でも何百年も前の話で廃れてきた古い言葉なうえ江戸弁。現代人や地方人のセリフとしては違和感ある。
さて、
「貴様!」だと大声でも叫べる。地域性も無い。
さらに貴様だから実は公平性や知性やそれらの欠如をも示せる。たとえば「おめえ、ゆるさん」とか「あなた様のその振る舞いだけは許す事が出来ない」まで演じ方でニュアンスが出せる。
しかも違和感あって引っかかるからセリフを記憶に残しやすい(一瞬一瞬で流れてしまう映画の言葉ではとても重要)。
いろいろ使いやすかったんでしょう。
首相も大尽さんも軍人さんもヤクザの下っ端も「貴様!」でいけるものね。囁くようにも大声で怒鳴るのも出来る言葉。
ちょっと脱線すると、
「愛してる!」ってセリフは大声で叫びにくいと思うのです。囁きはしやすいけれど。
「好きだ!」は叫べるし囁けるけれど、でもやっぱりlikeだもの、愛より格が下がった気がする。私はハサミが好きだ。私はハサミを愛してる。ね。
「大好き!」ってのも悪くない。でもやっぱりとても好きってだけだから。深みが足りない事も多い。
何かいい言葉が無いものかとも思うのです。
叫べて囁けて深い意味を感じさせる事も出来るような。つまり演技でニュアンスを変えやすい使いやすいセリフ。
もちろん「馬鹿野郎」や「お前を守る」や「生きろ」のようなセリフでその気持ちが伝わるようにシナリオを組み立ててあるのが良い手なのでしょうが、
もっと端的に伝わる使いやすい言葉があればさらに良くなるのにと。
きっとそれこそ、
「愛してる」の代わりに、
今は何か逆の意味をもつ言葉を逆転させる用法が将来発明されるのかもしれません。
「貴様ぁ!」の怒鳴りセリフのように。
話を戻します。
そういや、
ここ何年かで「やばい」がおいしい等のいい意味で使われだしましたね。
日本語では意味の逆転は時々起こる現象のようです。
○○くんも”君”です。「君主」や「わが君」の君ですね。元々は親しい人や格下を指す言葉ではなかったのでしょう。
「忠犬八公」の公も。
たしか他にもいくつかあったような。
さて、
いちどセリフかなにかで「貴様」を尊称で使ってみたいです。
それこそラブレターか何かで
女性から男性への手紙のナレーション。囁くような声で、ONマイク…女声の低音部まできっちり捉えて、息遣いも感じさせるマイク位置で。
「愛しいキサマ。いつもキサマの事を思ってすごしています。キサマの茶碗、お箸。キサマの声。キサマの匂い。キサマと過ごした時間を支えに毎日すごしています。どうか無事に帰ってきてください」
画面は地の果てに向かう男と家に残された若い妻のカットバックを重ねて。現在じゃなくて架空の過去の設定にして。
引っかかる言い回しですが多用していくと案外それが良い効果になるかもしれません。
なんにしてもお客さんに何か覚えてはもらえるかもです。
なんだか、
こんな事を普通の顔をして抜け抜けとやってみたいなぁと思った今日です。
久々に一日睡眠をたっぷりとった日でした。
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