2009/06/25

ビクトル・エリセ「ミツバチのささやき」「エル・スール」

十三の第七藝術劇場


ビクトル・エリセ監督(Wikipedia)


「ミツバチのささやき」(Google)


「エル・スール」(Google)


を上映してました。今週だけ。


朝からいそいそと観に行きました。








去年DVDで「10ミニッツ・オールダー」(Google)っていう短編集、オムニバス映画を観まして。もともと短篇映画は好物なんですが、それを差っ引いても、


面白い。


ヘルツォークもヴェンダースもベルトリッチも、知らなかったフィギスのもメンツェルのも良いなぁ、ゴダールのもとんでもなく凄いなぁと思いながら観てました。





その豪華な面子の駆け引きの中でも、とてつもないパワーで沈黙の中にいろんなものを吐き出したような作品があった。





「ライフライン」エリセ





ああ、もう、こいつはやられた。この10分間は上手すぎる。作る姿勢がよすぎる。天才と物作りとして真面目な生き方と…。





この監督は「ミツバチのささやき」の人か、完成度はさらに高くなってるなぁ。そういや80年代の終わりに観た「ミツバチのささやき」はレンタルビデオでだったからなぁ。こんなに美しく凄みのある映像だったっけ。


また見直してみたいなと思ってました。








そして今日、スクリーンで見直した「ミツバチのささやき」は、とても美しい撮影でした。頑張って凄いのを掴まえた映像が続出。どのワンカットもとても手が込んでいる。音も素晴らしい。





が、しかし、プリントがぁ…。73年の映画にしてもそれは無いだろうって…。上映用プリントから一度インターネガ作ってプリントしてしまったのかと思うぐらい落ちてる気がする。ネガなしで作った予告編みたいなプリント。退色しただけとも思えない。


撮影の構図も光の調整も素晴らしいだけにこれはないわと思いながらみてました。


そういや昔ビデオで観たときもこんな印象だったかも。テレビモニタで映画観るとこういう物を見逃すのか…。ここまで素晴らしいとは気づかずにいました。





しかたないんで頭の中でプリントのタイミング取り直してグラデェーションも補って、想像をたくましくして観て取る。


そうして脳内で復元しつつ観ていたらとてつもない映像と音に圧倒されまくり。





たんのうしました。


あえて感性なんて言葉に閉じ込めたくない。緻密な計算に熱い想い…。ああ、これは知恵と愛と勇気だ。(^^)





こういう映画こそデジタルリマスターして最初に監督や撮影や編集が意図したプリントを再現してほしい。








「エル・スール」は構成が不思議で悩んでしまいました。





うーん。例えて言えば、上質なミステリを観てる。一つ一つの謎にドキドキしてフェアなヒントにワクワクして人物に完全に引きつけられていて、さて探偵が「そうかわかった!みんなを集めてくれたまえ」ってセリフを言ったところで唐突にエンドタイトルがって感じです。





この映画はミステリなんだと思う。娘が父の人生を推理する物語。もっとも近しい人の謎の人生。





気になってさっき調べてみたら、撮影が中断。シナリオの後半、エル・スールが舞台の部分が未撮影のまま、仕方なく今の形で公開したらしい。


ああ、それで解決部分がないんだ。納得。





あの父の故郷、少女が憧れて謎が渦巻くエル・スールで何があったのか。内戦とフランコの独裁があの夫婦や恋人や両親やお手伝いさんにどう関わったのか。彼の中で医師とオカルトがどう両立したのか。あの力は何か。少女がどうやって父や母を同じ高さの視線で見られる大人になれるのか。


ああもう、夜も眠れない。ははは。いや、あの少女の本当の親は誰だろうと思う所まで妄想が広がってると、本当に気になる。


そこまで妄想をかき立てるように作ってある映画です。








エリセは緻密だ。ていねいなていねいな計算。


観せるものと隠すもの。


なんかね、世阿弥さんの「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず」を地でやってはるなぁ、この監督。そういう世界が好きなのかも。


それはエイゼンシュテインさんの昔から映画の本質の一つ。


でも、ここまで華麗にきめられる人はすくない。





私としては、もっとワンカットが長くていいのにと思う。


かなりゆったりとはしているけれども、それでも普通のカット割のリズムで切ってはる。


あまりに高密度な映像と展開なので、これだとテンポが早すぎてついていくのに一苦労する。素晴らしい映像に思わずうっとり眺め入ってしまうと語りの展開を見失いそうになる。展開の華麗さに見入ると美しい映像の印象を捕まえ損ないそうになる。密度が高すぎる気がします。


早いテンポについてゆくのには疲れました。嬉しいけれど。





こんどは「マルメロの陽光」(Google)を観てみようかな。








今日予告編やってたので知ったけれど、第七藝術劇場で来週は


イジー・メンツェル監督(Wikipedia)の特集やるらしい。


メンツェルってあの「10ミニッツ・オールダー」の「老優の一瞬」を作った監督じゃないか。観たい。都合つけなきゃ(^^)













10年に1本映画製作の”鬼才”ヴィクトル・エリセ監督のデビューにして代表作品!DVD廃盤。<注意:訳有セール品>■ミツバチのささやき■



「ミツバチのささやき」に続く、”巨匠”ヴィクトル・エリセ監督の10年ぶり長編第2作!DVD単作は廃盤。■エル・スール -南-■



ビクトル・エリセ DVD-BOX






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