2010/04/30
チーズ怖い
ねずみがこんなことを言った。
「俺がチーズを食べない理由しってるか?」
「しらないよ」
「ほら」しっぽを差し出した。先がちょん切れている。
「な?」とねずみ。
「…なに?」と私。
「…ネズミ取りに挟まれたんだよ…自分で引きちぎった」ニヤリと笑いやがった。
「げっ」
「旨そうなチーズの塊がのってたんだ。思わず他の何も見えなくなっちまった。とんでもない大失敗。で、命か尻尾の先かを選ぶはめになった」
「…ああ、なんかわかってきた」
「分かったのか?ほんとにわかってるのか?…チーズ食べるの怖いって想像つくか?」
「…うーん」
「こうチーズがあるだろ。黄色い塊がいい匂いをさせてよ。思わず旨そうだと思う。もうそれがダメなんだ。いきなりこの無くした尻尾の先が痛み始める」
「しっぽの先が?」
「それで止めときゃいいものを、こうやってチーズに齧り付くだろ。
ものすごく旨い。
そうするともう嫌な汗が出てきて、心臓はバクバクいってるわ、涙でくもるわで、自分でも何してんだかわかんなくなってる。
…怖いんだよ。チーズが…とても」
「ああ、うんごめん、解ってなかった」
ねずみはしばらくしっぽの先をぶらぶら揺らしながら眺めていたけれど、ふとこっちを見て。
「なぁ、この話で俺が一番苦しいと思うのはどこか解るか?」
わたしは黙って見つめ返して待った。
「今でも、チーズが大好きなんだ。
チーズが怖くてたまんない今でも。
毎晩夢に出てくる。いい夢のときも悪夢のときも。
いつかまた…死ぬまでには旨いチーズを食いたい。そう思ってる」
ねずみは一つ鼻をすすり上げる音を立てると、
口の端を持ち上げてニヤリと笑った表情を作った。
「まあ、そういうこった。邪魔したな」
「おう、またな」「ああ、またな。…こんど、いつかチーズくれよ」「うん」「じゃな」
と去った。
JST4月30日9時(GMT0時)の「はやぶさ」地球からの距離 18,121,630 km、 Hayabusa Live
地球帰還予定はJST6月13日23時頃
��大雑把に、太陽ー地球間の平均距離が 150,000,000 kmぐらい、
太陽ー火星間の平均距離が 230,000,000 kmぐらい、
地球ー月間の平均距離が 384,400 kmぐらい)
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